敏感肌の相談、何十分でも
ポーラ・オルビスホールディングス(東京・品川)が社内ベンチャー制度の第一弾として昨年一月に設立したディセンシア(東京・港)は、業界でも珍しい敏感肌専門の化粧品メーカーだ。同九月の通販開始と同時にプランタン銀座(東京・中央)に直営店も出し、ブランドイメージづくりに取り組んでいる。多店化のノウハウを蓄積し、主力の訪販事業で手薄な二十―三十代女性に支持される新たな柱に育成する構えだ。
平日夕刻のプランタン銀座。仕事帰りのOLで込み合う化粧品売り場で、ディセンシアのコーナーはひときわ目立つ。他のコーナーの利用客は長くても数分で買い物を済ませるのに、同社の客は二十―三十分は店員と話し込むからだ。競合他社のように本格的な肌診断器は置かないが、「とにかく肌の悩みを聞いてほしいという需要に丁寧に応えている」(鈴木将史社長)という。
仕事を持つ人が増えたことなどで、若い世代を中心に敏感肌に悩む女性が急増している。業界推計では二十−三十代だけで約二百万人と、同世代の一割強を占めるという。鈴木社長はディセンシアを興すまで敏感肌を研究してきたが、「百貨店やドラッグストアでは自分にあう化粧品をなかなか探せないという女性が多い」と現状を説明する。
若い女性の需要開拓という路線はグループ全体の方向性とも一致。顔用と全身用のクリームの二品から販売を始めた。ただ新設まもないだけに、敏感肌向けブランドに重要な安心感と信頼感が伴わない。そこで、OLなど多数の客が立ち寄るプランタン銀座に直営店を持ち、ブランドイメージを確立することにした。
売り場面積は約十平方メートル。接客スペースも二席と、競合他社より狭い。鈴木社長は「広すぎるとお客が気後れして入りづらい。あえて狭くし、お客と店員の距離を縮めている」と理由を説明する。実際、接客時間は他社より圧倒的に長い。敏感肌の女性は化粧品の使い方などにも問題点があることが多いからで、「丁寧な接客で信頼を得つつある」(鈴木社長)。
時期は未定ながら、鈴木社長はディセンシアをまず二十―三十店のチェーンに育てようとしている。グループで出店を強化しているエステコーナー併設店が約三百三十なので、意欲的な数値目標といえる。小規模の売り場で丁寧な接客を心がける基本線は崩さない方針。多店化をにらみ、接客にあたる美容部員を効率よく育成するためのマニュアルづくりも進めている。
美容部員は接客を終えるたび、内容を質問事項と返答事項に分けて細かく記録することを徹底させている。きちんと悩みを聞き出せているかを判断するとともに、接客技術のノウハウを蓄積するためだ。月に一回は来店客を装った社員らが売り場を抜き打ちで訪問。お客への態度や内容が適切かを確認し、接客水準の向上につなげている。
敏感肌の女性に対応した商品が少ない市場環境を考えると、ディセンシアの事業を伸ばす余地は大きい。顧客の若返りを進めるという点からも、ポーラ・オルビスグループの成長を支える屋台骨の一つに育つ可能性を秘める。成否のカギの一つは、プランタン銀座の店が握る。
