五十歳代女性向けの高級通販カタログ戦争の火付け役が、
ディノス
(東京・中野)が四月に創刊した「ダーマ コレクション」だ。
客単価一万五千円が損益分岐点とされるカタログ通販業界で、商品単価は平均一万七千円、注文一件当たり同三万円。レスポンス率(カタログ送付数に対する受注件数の割合)も「高額商品であれば一、二%程度」(通販大手)という中で、六・二%をたたき出す。
このカタログには従来の業界の「通説」を覆す手法が各所に取り入れられている。
ダーマの見開きに登場する衣料品は最大三点。商品にしわや影ができるのをためらわず、モデルが動きのあるポーズを取った大きな写真で全身を見せる。
素材のメーカー名や特徴は丁寧に文章で解説。テキスト部分はカタログで一般的なゴシック体ではなく明朝体を採用、読み物として印象づける。
一つの商品を他のページに何度も掲載、顧客の目に触れる機会を増やす。たとえばダイヤの十字架型ネックレス(十六万八千円)は商品紹介ページ以外に、モデルのアクセサリーとして六カ所に登場する。
商品デザインは「三十歳代テイストで五十歳代体形に合わせた」という独自のパターンを使う。色や柄、襟の形などで顧客の選択肢を増やすのが衣料品通販の定石だが、ダーマはあえて品数を絞り込み、色違いも最大三色まで。代わりに着回し例を複数紹介、使い勝手の良さを訴える。
ディノスが既存カタログ「ファッション編」の顧客を調査したところ、五十歳代女性が自由に使えるお金は毎月六万円。その水準を意識した値付けでまとめ買いを狙う。
例えば人気スタイリストの押田比呂美さんが組み合わせを提案するページには、ウールジャージーのジャケット(二万九千四百円)とパンツ(一万六千五百九十円)に加えて、ウールヘリンボーンのブラウス(一万五千七百五十円)を掲載。全品買っても六万円強に設定する。
全体の割安感を印象づけるため、数万―数十万円の商品を扱う「名品図鑑」を約十ページごとに配置する。「今回準備数」という名称で「今しか手に入らない」とあおり、衝動買いさせる。
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通販カタログ市場で地殻変動が起きている。価格は高めだが素材にこだわり、流行デザインも取り入れた婦人衣料品・雑貨を扱う高級通販カタログの創刊が相次ぎ、火花を散らす。通販カタログは誌面が売り場。百貨店は独自ブランドを開発、通販専業は誌面に従来にない様々な仕掛けを施して、時間や経済的に余裕がある五十歳代の女性を購買に誘う。
東京・墨田にある三越の情報センタービルで、特命プロジェクト「カタログX(エックス)」が進行中だ。来年四月一日に発行される新カタログに向け、名称選定や誌面構成などスタッフ十人は大わらわだ。
新カタログには、様々な新基軸が盛り込まれる。商社経由で集めた商品が多い既存の「三越カタログ」で扱う女性用ジャケットは三万円前後だが、「X」は五万―八万円が中心。平均単価も三万円と従来の三倍だ。掲載予定の商品約百点は八割が婦人衣料、残りがバッグやアクセサリーなど服飾雑貨。全体の六割は三越がメーカーに仕様を発注し、買い取る独自ブランド商品だ。
誌面づくりで高級感を演出し、高めに価格設定する。三越はメーカーとの直接取引により、仕入れ値は卸経由に比べて低く抑えられるため粗利益も大きい。高級カタログとして軌道に乗せ、来秋号で有力アパレル各社にも「少ない経費で新しい販路を開拓できる」(杉山潤理事)と既存ブランドの商品掲載を促す。
百貨店各社は売り場での不振を補う切り札として、通販事業をテコ入れする。
高島屋
は五十歳代女性の嗜好(しこう)にあわせて、カタログを刷新した。十月には自主企画の婦人服ブランド「アイ トゥロア」を設けて、ジャケット(二万六千八百円)など七種類を投入した。「仕入れルートは異なるが、百貨店の売り場では二倍前後の価格の商品に匹敵する品質」(杉田正人企画担当課長)と販売に自信をみせる。
通販をPRする新聞の折り込みチラシも変更。今までのような布団や家具など「お得感」を強調した商品を全く掲載せず、百貨店の案内係の女性がカタログの表紙を紹介、請求はがきを印刷した形式にした。
従来のカタログ通販は商品を大量に仕入れ、低価格を追求することに重点を置いていた。「安さ重視」の顧客を前提にしていたため、ブランド作りは後回しだった。価格設定が柔軟にできるというオリジナル商品の拡充に路線を変える。
大丸
子会社の大丸ホームショッピング(神戸市)もセーターなどカジュアルに特化したカタログを八月に試験的に創刊した。店頭の商品より大きめのサイズや、ステッチやレースを施すなどデザイン性を高めた商品をそろえて、今後、売り場を補完する役割を担う。
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ブティックの女性店長とお茶を飲みながら話したり、友達を連れて来たりして、三回の来店のうち一回は買い物をする。総合通販大手
ニッセン
はそんな「井戸端会議」のような買い物の場面をカタログ誌面で展開しようと、来年一月「てせら」を大幅に刷新する。
商品を購入した客のインテリアを紹介する「お宅拝見」や、東京都内在住の利用者にニッセンの本社がある京都を旅行してもらうといった、顧客参加型の企画記事を充実し、帰属意識を高める。
旅行や保険、文化講座も取り扱うなど、商品PRが中心の総合通販カタログではいずれもかなり珍しい試みだ。
誌面でライフスタイルを提案しつつ「実現に必要な商品は何か」を具体的に見せて、顧客の購買意欲を刺激する。通販専業各社は生活シーンを再現し、共感を集めることを目指したカタログづくりに走る。キーワードは女性が仲間内で開く「サロン」だ。
オットー
(東京・世田谷)が来年四月創刊する五十歳代向けカタログは「欧米風の余暇の過ごし方をカタログで表現する」(高橋克典副社長)。ドイツのオットーグループ傘下の欧米企業の商品を中心にそろえ、価格は主力カタログ「フォーユー」に比べて約三割高めに設定する。当初は全体の六割を衣料品、四割を服飾雑貨にするが、秋冬号からは食器などテーブルウエアを追加する。
五十歳以上の女性はグループで旅行に出かけたり、友人宅を行き来するなどアクティブ。仲間と集まって自宅で開くお茶会なども「カタログ通販で買った新しい服や雑貨、食器のお披露目の場になる。集まった他の人にも気に入ってもらえれば購買の輪が広がる」(高橋副社長)と期待する。
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以前はカタログ通販を利用したという五十歳代の間では、四十歳代までを対象にした現在の品ぞろえは「若すぎて体形やテイストが合わない」と敬遠されてきた。一方、六十歳代以上が大半の百貨店通販の場合「客の要望の四割近くが若い感覚を持った品ぞろえ」(三越)。五十歳代は空白地帯だ。
日本通信販売協会(JADMA)の二〇〇四年調査でも、「通販で衣料品を買いたい」という五十歳代女性は六三・六%に達し、四十歳代(六二・二%)を上回る。ただ実際に購入した五十歳代女性は四五・四%で、四十歳代(六九・八%)と比べて大幅に低い。年間の通販利用金額も五十歳代女性は平均五万円と四十歳代女性より八千円低い。言い換えれば、五十歳代の潜在需要は高い。