長年、何の疑問も持たずに使い捨ての生理用紙ナプキンのお世話になってきた。日本の生理用紙ナプキン第1号、「アンネナプキン」の誕生が1961年。それ以前、女性が経血を処理する時は、脱脂綿を布に包んで使うのが主流だったそうだ。その使い心地は「アンネナプキン」とは格段の差があったという。
特に筆者の世代では、それが必要な年齢になった時にはごく当たり前に存在していた紙ナプキン。いまや世界一の品質と言われるほど進化した日本の生理用品の便利さを、私たちは享受してきたと言えるだろう。そしてまさかこの時代になって、使い捨て以外の、洗って繰り返し使える布ナプキンが普及するとは想像もしていなかった。
ところが最近、布製の生理用ナプキンがインターネットショップや通信販売を通じて広がりを見せている。注目される理由の1つは、エコロジーの観点である。紙ナプキンは利便性はあるが、反面、使い捨てのためゴミになる。ゴミとして償却する場合、地球温暖化の一因にもなりかねない。
いったい、どれだけの紙ナプキンがゴミになるのだろうか?厚生労働省薬事工業生産動態統計によれば、2003年度の生理用ナプキンの生産量は約80億枚だ。別の見方をすれば、私たちが生理中に紙ナプキンを1日5枚ずつ、毎月5日間、40年間使用し続けたとすると、1人の女性が生涯で使うのが1万2000枚。これだけの紙ナプキンをゴミとして排出することになる。
布ナプキンの特徴は?
最近目立って増えてきた布ナプキンの製造会社、販売店に話を聞いてみた。
「ゴミを出さない心地良い暮らしがしたい」との理由で、1998年から布ナプキンの製造販売に取り組むのは、有機野菜の宅配サービスを行う「くらしを耕す会(愛知県名古屋市)」だ。
布は普通塩素漂白した後に染色するが、同社の布ナプキンは、生地を織るメーカーが「生機(きばた)」と呼ぶ無漂白・無蛍光の100パーセント綿素材を使っているのが特徴だ。また、両面起毛のフランネルで柔らかい。
布ナプキンは、長方形の布を2つ折りや3つ折、4つ折りにたたんで使うタイプで、2つ折りにするSサイズは1枚340円、4つ折りにするLサイズだと440円。1つ270円のパッドと一緒に使う。この布ナプキンは「白うさぎ」というブランドで卸売りもしており、様々なネットショップで扱っている。
くらしを耕す会の瀬間俊子代表は、こう語る。「有機農産物と同様布ナプキンも、機織りから縫製まで愛知県内の地元の工場で製造しています。現場に立ち会い、目配りしながら、製造される品を消費者に届けるためです。今年からは無漂白・無蛍光に加え、起毛前の合成洗剤による洗浄過程もなくしました。今まで以上に安心して使ってもらうことができ、製造過程での環境への負担も減らしています」。瀬間さんによれば、「ここ数年20〜30代の利用者が増えて、布ナプキン売り上げは右肩上がり」とのことだ。
布ナプキン「白うさぎ」は、『ひろがれひろがれエコ・ナプキン』著者で、普及活動をする角張光子さんとのコラボレーションで作られた。「角張さんは、布ナプキンを手作りする方法や使い方を伝えています。私たちは安心できる布ナプキンを低価格で提供することで、女性の暮らしに役立ちたいと考えます。布ナプキンが、自分や生活を見つめ直すきっかけになってくれたら」(瀬間さん)
全国規模で有機・低農薬野菜と無添加食品の宅配を展開する「らでぃっしゅぼーや(東京都港区)」も今年1月から、化学処理をせず無漂白・無着色の布ナプキン「Be*cloth」の販売を始めた。低ホルムアルデヒドであり、法律の基準は75ppm(ppmは100万分の1)以下(大人用の下着の場合)だが、20ppm以下という検査結果を出している。
商品企画を担当した事業本部の松井光喜さんは、「繊維の染色加工などに使われるホルムアルデヒドは、アレルギー感染を起こしやすい物質として知られています。「Be*cloth」なら、母乳育児中の人や化学物質が気になる人でも安心して利用できます」と話す。製品ラインアップは、夜用1点、昼用3点、布ナプキンライナー2点の計6点で、価格は787〜1890円。らでぃっしゅぼーや会員向け通販カタログのみの販売だが、初回から3144枚という注文を受け、好スタートを切った。
一方「元々は環境のためというより、女性が楽しんで使える商品として布ナプキンを企画した」というのが、カタログ通販大手の
フェリシモ(神戸市)だ。2005年6月から布ナプキン販売を開始し、今年4月で累計50万枚を売るヒット商品になった。
同社の布ナプキンは、綿100パーセントの肌触りのよさに加えて、色柄がかわいらしく見た目も楽しいのが特徴だ。デザインの愛らしさに「ブルーデイ」であることを忘れそうである。スナップがついており、使用中には下着からずれないように、使用後はたたんで持ち帰れるように工夫されている。
「ゴミを減らしたいという環境配慮に加えて、かぶれにくい、肌触りが優しいという機能面から布ナプキンを買う人が増えています」と語るのは、フェリシモ広報の坂村道子さんだ。普通サイズ(21センチ)2枚セットで1900円だ。
同社で布ナプキンを企画したのは、20代後半の女性。新撰組を題材にした漫画に出てくる女性隊士が、生理中にどういう処置をするかを描いたシーンにインスピレーションを得た。「女性は、食品やファッションの素材にこだわり、デザインも自由に選びます。それなら生理用品にも選択肢があってもいいのでは、と考えました」と坂村さんは言う。
布ナプキンの普及とともに、洗濯用の商品も登場した。「地球にやさしい雑貨店アメリ」では、布ナプキンの漬け置き洗いに便利な蓋つきホーローバケツ、重曹洗剤、サクラの木でできた洗濯板などを扱う。
店主の豊田高子さんも布ナプキンの利用者で、自ら試して便利な商品を紹介しているのだ。「布ナプキンは、重曹など天然成分のアルカリ性洗剤を溶かした水に漬けておき、まとめて洗えばそれほど苦にならない」と豊田さん。人気商品はアルカリ性で血液が落ちやすい重曹電解洗剤で、ひと月で30個を売り上げる。
洗濯板というと「昔の洗濯用具」という感じがあるが、布ナプキン用にこういう形で復活しているのは面白い。
布ナプキンの使い勝手とコストをチェック
布ナプキンの使い心地はどうなのか。最初は「布ナプキンで大丈夫なのか」という不安はあったが、フェリシモの坂村さんに「最初は布ナプキンだけでなく紙ナプキンと上手に併用すれば」と教えられ、安心して使うことができた。
肌触りがよく、むれる感覚がほとんどない。血液の量にもよるが、取り替える頻度は紙ナプキンとほぼ同じだ。モレの心配も少ない。難点は、自分で洗って干す手間がかかることだが、ゴミが出ないので気持ちがいいことは確かだ。
布ナプキンの衛生面について、母と子の外来・女性外来「えなのさとクリニック」の福島幸江先生に聞いてみた。
「布ナプキンの利点は、科学的にはまだ証明されていません。これからデータが蓄積され、解明されていくのだと思います。ただ、私自身使ってみた感想は、天然素材の心地よさが感じられます。患者さんからは、布ナプキンを使うことでかぶれやムレが少なくなったという声も聞きます。(使い捨てナプキンと違い)布ナプキンは血液の状態を確認する習慣ができ、自分の身体の変化に気づきやすくなるというメリットがあります。健康を保つためには、それが大事なのです」
生理は、女性の人生において重要なもの。しかし使い捨てナプキンと一緒に血液を捨てることで、その大切さを忘れていた気がする。布ナプキンを使うと、不思議と自分の身体に優しくしたくなり、「使い捨て」中心の暮らしを見直すようになる。布ナプキンは、環境視点の暮らしに近づく入口と言えるのかもしれない。
編集部では、布ナプキンと紙ナプキンのランニングコストを比較してみた。例えば「ハッピー布ナプキン」(フェリシモ)は2枚で1900円。生理期間中、1日6枚使うとして5700円。ただし紙ナプキンと違って、使い終わった後は自宅に持ち帰ってその都度洗う手間はある。ちなみに布ナプキンについた経血は、完全にきれいには落ちないこともあるので、これは認識しておこう。さて、布ナプキンは洗って使えるので2年間持つとした場合、2年間にかかるコストは5700円となる。一方紙ナプキンは、1パック約20個入りで300円ほど。1回の生理期間中に1パック使うとすると、1年間では3600円だが、2年間だと7200円になる。長い目で見れば、布ナプキンの方がお得かもしれない。